July 14,2005

ベルモンドに学ぶ男のカッコ良さ/気狂いピエロ

ジャン=ポール・ベルモンド

「うわっ、これだ」戦慄が走った。

まだ、大人の男に成りきれていない頃にこの映画を見て男のカッコ良さを見た。別に仁義とか契りとか極道の世界の話のことではない。ただただ当たり前に男をやっていることがとても粋でカッコ良かった。その映画のタイトルは[ Pierrot LE FOU ] 邦題は「気狂いピエロ」でヌーヴェルバーグの代表作として大ヒットした。

監督は今では余りにも有名になったジャン=リュック・ ゴダール(Jean-Luc Godard)、出演はジャン=ポール・ベルモンド(Jean-Paul Belmondo)、アンナ・カリーナ(私生活ではゴダールの妻)だ。

この「気狂いピエロ」の全てが俺の脳を支配してからかなり長い月日が流れた。どんな場面でもどの映画が好きかって訊かれれば、今も昔もこの「気狂いピエロ」の他には何も浮かばないほど強烈な存在感がある。

暗がりの中に差し込む光の束にモクモクと吐き出されるタバコの煙、断片的に挿入されるいきなり切り替る明と暗の眩ゆいくらいの編集構成。きっと音楽が原点にあるのだろう、この構成のリズムはとても心地よく極彩色と光と音が快楽主義者のように全てを包む。個人主義の進化とでもいっていいだろう、先人が残した足跡を踏まずここまでストイックにエゴイズムを発展させたオリジナリティーは強烈に俺を虜にした。

全編に渡るストーリとアンナ・カリーナがピエロを想って詠うそのポエムが、観るものを客観的現実(ありきたりの普遍の世界)から超現実的世界(人生は一度きり)へと否応無くパラダイムをシフトさせる。

ジャン・ポール・ベルモンドは今でもフランスではカッコイイ男の代表だ。フランス女性と話す機会があったら是非訊いてみるといい。「俺は大好き」って伝えるとさらに大喜びする筈だ。そのカッコイイ男とジャン・リュック・ ゴダール(1959年 映画『勝手にしやがれ』で長編映画デビューし、主演はこれまたベルモンド)がセッションするとかくも見事なエッセンスを醸し出したのだが、実際はベルモンドはシナリオを一切使わないゴダールのやり方を批判して二人の仲はその後離れてしまったのが悔やまれる。

そして最後にお気に入りのこの名文を捧げよう。俺にとってまるで呪文のようにとりつかれた不朽の「気狂いピエロ」に捧げられた詩は今も俺の中で「男のカッコ良さ」を名言する言葉だ。そして今も、脳内麻薬として俺のカラダの中でどくどくと脈打って熱いから凄い。

 

や さ し く て 残 酷

現 実 的 で 超 現 実 的

恐 ろ し く て 滑 稽

夜 の よ う で 昼 の よ う

平 静 の よ う で 狂 気 の よ う

素 晴 ら し き 気 狂 い ピ エ ロ